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ファンタジー世界の居住性 [ファンタジー世界考察]

 最近ファンタジー世界、異世界転生なるものが大流行である。

 私は好きではない。

 何故私が異世界転生を好かないのかさっぱり理由はわからない。理由の一つはあまりに転生のシステムが安易に思えるからかもしれない。たとえばナイツ&マジックの転生はあまりに安易でご都合主義的に思えた。死んだら理想の異世界に行けるとか、なんというか極端すぎる話をすればそれなら自殺もしたくなる。あとナイツ&マジックは転生先にも親がいるのだが、既に人格形成が済んでいるためにその親の存在意義が薄く、そこが軽薄にも見えた。幼女戦記のように孤児として転生すれば納得もできる。だいたい少年少女が自立して活躍するために親が片方なり両方なりいないのはストーリーテリングの基本でもある。


 あともう一つはファンタジー世界に特別暮らしたくもないというか、そもそもファンタジー世界は特別快適でもなく、居住性も低いというのがある。これだけファンタジー世界に憧れていながら今更なんであるが。


 たとえば、一番大きな差異の一つが窓ガラスである。中世ヨーロッパには窓ガラスなどなかった。こんな単純な知識であるのに、ファンタジー世界の居住性に極めて関わるがために無視されている事象の一つである。最近だとFate/Apocryphaの回想シーン、即ちジークフリートやジャンヌ・ダルクの「生前」の街並みの背景絵で家々の窓に全部窓ガラスが嵌っていた。ジャンヌ・ダルクはもちろんのことジークフリートの時代にあんな窓ガラスというのもおかしなことである。
 そもそも我々が想像する、というより日常目にする板ガラスの量産方法が確立されたのは19世紀とか最近なのである。それまでの板ガラスの製法は、まず壜やコップのように円筒形にガラスを膨らませ、その円筒を切り開いて板状にするというものであった。当然ながらそうそう大きくできないし、手間がかかるから高価である。しかも綺麗な平面にもならないし、当時は透明にならずやや緑色を帯びていた。ヴェルサイユ宮の鏡の間などは当時の技術の粋であり、ロンドン万博においてすら水晶宮は驚異であった。1520年、イングランド王国とフランス王国が懇話のために設けた通称金襴の陣における、仮設宮殿に設えられた一枚の窓ガラスはファンタジー世界でいうならばマジックアイテムに等しい奇跡的なものであっただろう。
 では中世ヨーロッパの家々の窓にはどんなものが嵌っていたか。木の板である。当然光は入ってこないから室内は暗い。あるいは、採光のため窓は空いているが外気も吹き抜ける。冬は窓を閉ざして灯りをつけるか、太陽光のために寒さに凍えるかである。
 上記の通り板ガラス自体は存在した。しかし窓ガラスは小さく、透明ではなく、凸凹で、ひどく高価なものであった。だから城などでも、人が移動するたびに窓ガラスはサッシごと取り外しては人のいる部屋の窓にだけ嵌められた。つまりガラス窓を取り外しては持ち運び、在住する部屋の窓に嵌めた。
 板ガラスの製法はどう頑張っても中世ヨーロッパの技術力では量産できないものである。だからまずもって中世ヨーロッパ風ファンタジーの世界にガラス窓は普及できない。工夫の余地は少ないのだ。魔法で作ればといっても、大抵のファンタジー世界では魔法はポピュラーなものではないし、あるいはドワーフの技法などといってもドワーフが近代的工場を持っているわけではない。せいぜいできるのはドワーフの技術を秘技としてブラックボックス化させることだけである。


 他にファンタジー世界の居住性で問題になりそうなのはトイレである。なにせこれが面倒でこのブログでは冒険者はトイレに行かないと結論づけたくらいである。
 ファンタジー世界のトイレでネックになるのは二つ。一つは下水処理である。中世ヨーロッパ、というより割りと近代まで、パリのような都市でも下水はなくて、おまるにした屎尿を窓からぶちまけていた。ファンタジー世界の都市はなにより臭い。
 もう一つはトイレットペーパーである。そもそも中世ヨーロッパには紙がない。古来から人々が大便をしたあと何で尻を拭いていたか、それが問題である。葉っぱや木箆で拭えればまだましな方で、今だって文明化されていない世界では手で拭って水で洗うような場所もある。
 そんな異世界に転生したいだろうか?


 最後にファンタジー世界の食事である。

 最近はグルメ漫画が流行していて、ついでにファンタジーも流行しているから、ファンタジーグルメというジャンルも確立されつつある。
 しかし間違いなくいえる。

 ファンタジー世界の料理は大して美味しくない。

 まず材料である。
 砂糖がない。極めて高価な輸入品である。香辛料もない。肉は堅い。豚と鳥は食用に飼育されているがそれでも飼料は豊富ではない。牛肉や馬肉などは、そもそも牛も馬もファンタジー世界では食べるものではなく農耕のための家畜である。今で言えばトラクターである。そうそう潰して食べられない。ただ、基本的に冬を越すための飼料を確保できないので、冬が来る前に一定数屠殺する必要はあったのだが。そして牛も馬も、ついでに豚も鳥も食用としての品種改良が進んでいない。現代のブロイラーなどは食味のために特殊な飼育をされている。フォアグラなどよりよほど残酷な飼育をしている。話はずれたが、つまり、中世ヨーロッパというかファンタジー世界の肉は脂も乗っておらず、堅く筋張ったものだと考えた方がいい。特に牛肉については。
 他にも野菜にせよなんにせよ品種改良されていない食材というのは魚介類だけともいえよう。

 といってもファンタジー世界のグルメを一概に否定する必要はないのである。
 つまり、生まれた時から中世ヨーロッパの「まずい料理」に慣れているのなら、ファンタジー世界にも美味しい料理は幾らでもある。
 しかし、現代の「美食」に慣れた舌なら、ファンタジー世界の料理はとても物足りないものであろう。異世界転生など受け入れがたいものとなるだろう。

 もっとも、一年も転生先で暮せば慣れるのかもしれないが。
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コメント 2

小五郎

トイレについてはなんか、トリビアの泉がなにかでヴェルサイユのばらの世界で再現したものがあって笑ったな〜
by 小五郎 (2017-08-16 01:43) 

枸櫞

トリビアの泉のその放送は見覚えがありますね。
同時代の他の欧州の宮殿にはおまるがあってそれに排便するのですが、ヴェルサイユ宮にはおまるすらなかったようです。
フランス人のスカトロジーなのかわかりませんが。
by 枸櫞 (2017-08-16 22:38) 

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