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ファンタジー世界の宗教と修道院 [ファンタジー世界考察]

 話の枕を何か用意していたのだけれど、忘れてしまった。

 ファンタジー世界のマジックアイテムについて一文書こうと思ったのだが、たとえば資料(まあ正直Wikipediaだけれど)にリーヴルと書いてあって、それがそもそもどのような単位かわからない。調べると銀貨と思われるが、それが今の貨幣価値で幾らくらいになるかもよくわからない。
 このブログでは以前に、銀貨は100円、金貨は20万円、と偉そうに書いたが、どうもそれも正確といえるかわからない。いや、「ファンタジー世界の銀貨と金貨」はだいたいこれでもあっているのだが、「中世ヨーロッパ」となるとどうだか。調べるとフィオリーノ金貨は12万円くらいだという。ただ、20万円の根拠であるデュカート金貨は24金で、フィオリーノ金貨は18金らしい。
 ここでは偉そうに書いて、SEO的に検索上位にヒットするが、ここの情報など斯様に胡散臭いのであるから、留意されたい。


 今日は修道院のことを少し書く。……

 そもそも日本人は修道院にあまり馴染みがない。シスターの服はそれなりに有名だが、それくらいである。修道院組織は学校法人運営していることも多いので、日本人にはそちらのイメージが強いのかもしれない。
 日本で有名な修道院というと函館のトラピストやトラピスティーヌかもしれない。トラピストの方は厳格な修道院であり、観想修道会と呼ばれるキリスト教でも少し特別な、厳格な修道院ではある。徹底的な禁足地となっており、自由に中に入れるわけでもない。バターやクッキーは有名である。トラピスティーヌの方は、同じ観想修道会であり厳格な修道院なのだが、割りと観光地化している。もちろん、内部には入れないのだが。

 だいたい、日本ではやはりキリスト教はマイナーな宗教ではある。それに、キリスト教文化圏に全体的に馴染みはないし、一神教の「臭い」を知っているわけでもない。

 日本のネトウヨは、イスラームのテロなどが起きると、一神教つながりでキリスト教まで不寛容だのなんだのと難癖をつける傾向があるように見える。で、一応多神教である神道などを褒めるのだが。
 かわいそうなことに、ネトウヨに大人気の麻生太郎などはカトリックである。麻生太郎は首相在任時、アクィラサミットのついでにローマ教皇に拝謁したのだが、この瞬間こそ麻生太郎は個人的に首相となったことを神に感謝したのであろう、などと思っていた。他にも大平正芳は聖公会の信者であり、吉田茂は実質的にカトリックであった。洗礼は受けなかったが。もっとも、ネトウヨにとって吉田茂などは売国奴になっている可能性もあるが。
 そもそも彼らが支持する安倍=日本会議もキリスト教右翼と結びつきが強い。安倍が勝共統一教会で壺を売っていたというアンサイクロペディアの書き込みは眉唾だが、日本会議には統一教会も賛同している。表現規制も主体だったのはキリスト教右翼フェミの矯風会であった。松文館裁判など見ても右派と警察が表現規制の主体であった歴史が見えるが、近年サヨクがフェミつながりで表現規制に肩入れしているので、すっかり矯風会や生長の家や親学の連中が規制派だったことが忘れ去られている。

 話が大きくずれた。ここでは政治の話などしたくない。

 ファンタジー世界はたいていの場合、多神教の世界ということになっている。一つには、私の推論だが、ファンタジー世界を作ったキリスト教文化圏の人間が、キリスト教から逃避するために作ったのがファンタジー世界だからではないかと思っている。男がジェンダーフリーを目指して百合に走るのと同じである。
 これに、古代ローマや古代ギリシアなどへの憧れや、あるいは「蛮族」として暮らしてきたケルトやゲルマンの民への郷愁めいたものなども混じるのであろう。というかそちらが主体か。

 ではかといって修道院の存在を、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で無視していいかというと、そうもいかない。中世ヨーロッパ世界において修道院は、特に観念の面で非常に大きな、強い存在であった。修道院のない中世ヨーロッパ世界など想像できない。だから中世ヨーロッパをベースにする以上修道院は無視できない。
 中世ヨーロッパでもっとも技術と知性が発達したのも修道院である。大学などではない。修道院は知識の集積所であった。活版印刷のなかった中世ヨーロッパでは、図書の「生産」は筆写によるしかなく、そして筆写の最大の拠点が修道院であった。ファンタジー世界における活版印刷や紙の仮想的発展は世界観をそれを不要にするかもしれないが、中世ヨーロッパらしさは修道院なしでは語れない。
 修道院で技術的発展が見られたのは、その技術を開発する、あるいは発明の余裕を与える経済的基盤があったからだ。修道院には俗界領主からの寄進があったが、俗界領主と違い相続で分割されることがなかったため、財産は増える一方だった。
 観念的に修道院は重要である。その精神構造にはユートピア的なものが見られる。修道院の時間は永遠である。修道僧達は永遠の祈りを、俗界から断ち切られた祈りの場で送った。今日も、明日も、明後日も、永遠に彼らは祈りを続ける。機械式時計が修道院で生まれたのは偶然ではないと澁澤龍彦は述べている。祈りの時を計り、告げるのが機械式時計の役割だ。機械式時計の盤面はユートピア的である。針は永遠に盤面を回り続け、終わりがない。時計の針は永遠に回り続ける。
 もっと世俗のことをいえば、酒は修道院の文化であった。坊主というと俗界の楽しみから切断されて酩酊するなどもってのほかと日本の感覚だと思われるが、そもそもヨーロッパは水が飲めたものではない。修道僧達は飲料にするためにも、労働の成果としても、酒を造った。ビールやエールに必須のハーブは修道院の秘密でもあった。蒸留酒も修道院で生まれた。かのマルティン・ルターなどは、ビールを飲むと天国が降りてくるなどと述べている。ワインもリキュールもビールも、今の時代だって修道院で作られている。
 それに騎士団というファンタジー世界でおなじみの組織も修道院のものである。騎士団は、十字軍の際に聖地巡礼を行い、巡礼者を助けるために結成された「騎士修道会」が元々の存在である。現代でも活躍しているマルタ騎士団、聖ヨハネ騎士団は十字軍で巡礼者の病気や怪我を治癒するための医療組織としてスタートした。だから聖ヨハネ騎士団はホスピタル騎士団とも呼ばれる。だいたい、騎士団は日本で思われているような軍事組織というわけでもない。元は修道会であるし、その後それを模倣して作られたのがガーター騎士団や金羊毛騎士団やドラゴン騎士団のような世俗騎士団であるが、これらはせいぜいが上流階級の社交クラブのようなものである。


 しかしまあ、キリスト教文化圏と、日本とでは文化的断絶は大きく、その最大の所以がキリスト教などの一神教にあるようには思える。
 いや、ギリシアやローマは多神教で、たとえば一神教が目の敵にした同性愛なども盛んに行われていたが、それでもそれが日本の文化と親和性がどれくらいあるのかはわからない。塩野七生などは古代ローマと日本の類似点を様々挙げているが。

 たとえば、私はここでJRPGを、絵面だけが綺麗とか、アニメチックにすぎるとか、そんな切り口で取り上げているが、JRPGとキリスト教文化圏のRPGの差異は一神教への親和性に所以するウェイトも大きいという。つまり、神というものへの考え方である。
 JRPGは、たとえば女神転生シリーズに見いだせるように、特に真・女神転生のLOWサイドの描き方に見られるように、割りと神に対して普通に叛逆する。なんなら、一神教の神を思わせる「神」なる存在が色々と裏で陰謀を巡らせている、すべての(主に悪の)黒幕である、というのが根強い。これは日本で特別発展したものだともいう。ラスボスがヤハウェなどというゲームは日本ならではとも思える。いや、今ラスボスをヤハウェにする度胸がセガにあるとも思えない。まあ、真・女神転生シリーズなど明らかにキリスト教の天使が今でも割りと悪の側に立っているが。

 別にラスボスにヤハウェを持ってきたり、神がすべての悪の根源とかいうのも、個人的に問題とか間違いとも思っていないし、なんなら好きでもあるが、しかしそれは一つの、大して厚い根拠をもった視点というわけでもない。確かに古代でもグノーシスの教えなどは神を悪と見做す思想であった。しかし軽々に中世ヨーロッパを同じ視点で見るわけにもいかない。カトリック教会についての、そういった日本的な見方を通した中世ヨーロッパ観、というかそれを元にした中世ヨーロッパ風ファンタジー世界の信仰のあり方は、かなり薄っぺらく見えることが多い。上述のネトウヨくらい軽率である。


 中世ヨーロッパ風ファンタジーだから修道院が必須であると述べたりはしないが、それに配慮していない世界の、特に宗教の面は、しばしば軽薄に見える。
 中世ヨーロッパ、もっというなら「未明の世界」における信仰というものの存在を軽く見ていることが多いように思える。日本は宗教というと今の半分無宗教状態が通常に思えるから、過去の神道や仏教、また神仏習合にすら理解が足りていない。日本の神道、仏教、神仏習合などを近代的な視点でしか理解し得ていない。キリスト教などは尚更である。日本で宗教などというと、新興宗教のことしか思い浮かばない人間も多いかもしれない。
 軽々にファンタジー世界の住人が宗教に叛逆するとは思えない。それはあまりに現代日本的価値観にも過ぎる。


 キリスト教文化圏と、日本の文化で大きな差異を見せるのは、宗教の陰画たるエロティシズムの分野かもしれない。だが、それを書くにはここの余白は……いやもう疲れたというか。
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